適正在庫とは?安全在庫・発注点の決め方と在庫最適化の進め方
適正在庫とは、欠品も過剰在庫も起こさない在庫水準のことで、安全在庫と発注点を決め、在庫回転率を見ながら継続的に見直し続けるのが要点です。
在庫を持つBtoB物販企業(卸・商社・メーカー)にとって、在庫は資金そのものです。多く持てば欠品は減りますが資金は寝てしまい、少なく絞れば資金は軽くなる代わりに欠品リスクが高まります。この「欠品と過剰のジレンマ」をどこで折り合わせるかが、適正在庫の課題です。
この記事では、規模50〜200名の物販企業を想定し、適正在庫の定義から安全在庫・発注点の決め方、在庫回転率での見直し、そして担当者の勘に頼らずシステムで継続管理する進め方までを、一般的な在庫管理理論にもとづいて整理します。
適正在庫とは?欠品と過剰在庫の最適点
適正在庫は「ちょうどよい在庫量」を一意に指す固定値ではなく、需要・リードタイム・許容する欠品リスクのバランスで決まる範囲のことです。同じ商品でも、需要が増えれば適正在庫は上がり、調達が速くなれば下がります。

適正在庫の定義
適正在庫とは、「欠品による販売機会の損失」と「過剰在庫による保管・資金・廃棄のコスト」を合わせた総コストが最小になる在庫水準を指します。片方だけを最小化すると、もう片方のコストが膨らみます。
実務では「常にこの数量を持つ」という静的な基準ではなく、「下限(安全在庫)」と「発注タイミング(発注点)」のルールとして運用します。商品ごとに需要や調達条件が違うため、適正在庫も商品ごとに設計するのが基本です。
欠品・過剰のコスト
欠品は、目に見える失注だけでなく、納期遅延による信用低下や、代替品・緊急仕入れの追加コストも招きます。BtoB物販では「いつもの商品がすぐ届く」ことが取引継続の前提になりやすく、欠品の影響は単発の売上以上に大きくなりがちです。
一方の過剰在庫は、保管スペース・倉庫費・滞留による品質劣化・資金の固定化というコストを生みます。下表は両者のコスト構造を整理したものです。
| 観点 | 欠品(在庫が少なすぎる) | 過剰在庫(在庫が多すぎる) |
|---|---|---|
| 主なコスト | 失注・納期遅延・緊急仕入れ | 保管費・資金固定・廃棄リスク |
| 影響の出方 | 取引先の信用低下 | キャッシュフロー悪化 |
| 見えやすさ | 顧客クレームで気づきやすい | 帳簿に埋もれて気づきにくい |
| 対策の軸 | 安全在庫・発注点を引き上げる | 発注量・発注頻度を見直す |
安全在庫・発注点の決め方
適正在庫を運用に落とすには、「最低限切らさないための在庫(安全在庫)」と「いつ発注するか(発注点)」の2つを商品ごとに決めます。この2つが決まれば、発注の判断は数量比較だけで済むようになります。
安全在庫の考え方
安全在庫は、需要のばらつきや調達リードタイムの遅れに備えるための「予備の在庫」です。需要が読みどおりなら不要ですが、現実には出荷量も納期も変動するため、その変動を吸収するクッションとして持ちます。
安全在庫を厚くすれば欠品は減りますが過剰在庫に近づき、薄くすれば資金は軽くなりますが欠品リスクが上がります。需要変動が大きい商品やリードタイムが長く不安定な商品ほど、安全在庫を厚めに設定するのが一般的な考え方です。逆に、需要が安定し短納期で再調達できる商品は薄めにできます。
発注点の計算
発注点とは、「在庫がこの数量まで減ったら発注する」というトリガーとなる在庫水準です。一般的な在庫管理理論では、調達期間中に消費する見込み量に安全在庫を足して求めます。
発注点 = 平均出荷量(1日あたり)× 調達リードタイム(日数)+ 安全在庫
(計算例)1日あたり平均出荷10個・調達リードタイム5日・安全在庫20個の場合 発注点 = 10 × 5 + 20 = 70個 → 在庫が70個まで減った時点で発注する
上記はあくまで一般的な計算式と例示であり、自社の実績統計ではありません。実際の数値は、自社の出荷データとリードタイムの実測値をもとに商品ごとに算出してください。リードタイムが季節や仕入先で変動する場合は、その変動も加味する必要があります。

在庫回転率
在庫回転率は、一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す指標で、在庫が適正かを後から検証する物差しになります。回転率が低い商品は資金を寝かせている過剰在庫の候補、回転率が高い商品は欠品に注意すべき候補です。
在庫回転率 = 期間中の出荷数 ÷ 平均在庫数
回転率は商品カテゴリや業態によって妥当な水準が大きく異なるため、一律の目標値を当てはめるより、自社内で商品ごと・前期比で比較するのが実務的です。回転率が落ちている商品を見つけたら、安全在庫や発注量を見直すきっかけになります。安全在庫・発注点・回転率の役割は下表のとおりです。
| 指標 | 役割 | 見直しのサイン |
|---|---|---|
| 安全在庫 | 変動に備える下限の在庫 | 欠品が続く/逆に滞留している |
| 発注点 | 発注のトリガー | 発注が早すぎる・遅すぎる |
| 在庫回転率 | 在庫が適正かの検証 | 前期より明確に低下した |
適正在庫を維持する運用
適正在庫は一度決めて終わりではありません。需要は季節やキャンペーン、取引先の都合で動き、リードタイムも仕入先の状況で変わります。決めた安全在庫・発注点を、実績と照らして定期的に更新し続けることが「維持」の本質です。
運用でつまずきやすいのが、担当者の勘や経験への依存です。特定の担当者が頭の中で発注を判断していると、その人が不在のときに欠品や重複発注が起きやすく、判断の根拠も共有されません。発注点・安全在庫を数値ルールとして全員が見える形にしておくことが、属人化を防ぐ第一歩になります。
また、在庫数だけを見て発注しても適正在庫は保てません。「すでに発注済みで未入荷の数量(発注残)」や「受注済みで未出荷の引当分」を差し引いた、実質的に使える在庫で判断する必要があります。これらが台帳やExcelに分散していると、見かけの在庫と実態がずれ、発注ミスの温床になります。在庫・受発注の数字が1か所に揃っていることが、正しい発注判断の前提です。
システムで適正在庫を継続管理する
安全在庫・発注点を決めても、Excelや個別ツールで在庫・発注・受注を別々に管理していると、更新の手間とズレで運用が続きません。適正在庫を回し続けるには、在庫と受発注が連動し、発注点に達したら気づける仕組みが要ります。販売HUBは、在庫・見積・受注・請求・案件×収支(粗利)が「最初から1つ」になった一体型クラウドで、この継続管理を支えます。
在庫と受発注が同じ仕組み上でつながっているため、入荷で在庫が増え、受注・出荷で在庫が減る動きが二重入力なしで反映されます。発注残や受注引当を踏まえた在庫を1か所で把握できるので、発注点に対する判断を実態ベースで行えます。詳しい連携の考え方は受発注システムとは|BtoB物販の発注・仕入・在庫連動を止めない仕組みでも解説しています。

さらに、会社ごとに独自項目を追加できるカスタム項目を使えば、商品ごとの安全在庫・発注点・リードタイム・ロット・型番・規格といった在庫管理に必要な情報を、商品データの一部として保持できます。この範囲はノーコードでカスタムでき、自社の運用ルールに合わせて項目を持たせられます(画面やワークフローを自由構築するフルノーコードではありません)。発注点や安全在庫を商品ごとに持っておけば、勘ではなく登録した数値ルールで発注判断を共有できます。

在庫・見積・受注・請求・案件×収支が最初から1つになった販売HUBなら、発注点・安全在庫を商品ごとに持ち、在庫と受発注を連動させて適正在庫を継続的に管理できます。
在庫管理を含めたシステム選定の基準は在庫管理システムの選び方|BtoB物販が受発注・請求まで一元化する基準【2026年最新】で詳しく整理しています。

よくある質問
Q. 適正在庫とは何ですか? 適正在庫とは、欠品による販売機会の損失と、過剰在庫による保管・資金・廃棄のコストを合わせた総コストが最小になる在庫水準のことです。固定の数量ではなく、需要・リードタイム・許容する欠品リスクによって変わる範囲として、商品ごとに設計します。
Q. 安全在庫はどう決めますか? 安全在庫は、需要のばらつきや調達リードタイムの遅れに備えるための予備の在庫として決めます。需要変動が大きい商品やリードタイムが長く不安定な商品ほど厚めに、需要が安定し短納期で再調達できる商品は薄めに設定するのが一般的な考え方です。自社の出荷実績とリードタイムの実測値をもとに商品ごとに算出します。
Q. 発注点の計算方法は? 一般的な在庫管理理論では、発注点は「平均出荷量(1日あたり)×調達リードタイム(日数)+安全在庫」で求めます。在庫がこの数量まで減ったら発注する、というトリガーとして使います。これは一般的な計算式であり、実際の数値は自社の出荷データとリードタイムの実測値で算出してください。
Q. 適正在庫はシステムで維持できますか? 維持できます。在庫と受発注が連動するシステムを使えば、入荷・受注・出荷による在庫の増減が二重入力なしで反映され、発注残や受注引当を踏まえた実態ベースで発注点を運用できます。販売HUBではカスタム項目で商品ごとの発注点・安全在庫を保持でき、勘に頼らず数値ルールで適正在庫を継続管理できます。
まとめ|適正在庫は決めて終わりではなく回し続けるもの
適正在庫とは、欠品と過剰在庫の総コストが最小になる在庫水準のことです。実務では、商品ごとに安全在庫と発注点を数値ルールとして決め、在庫回転率で結果を検証しながら見直し続けることが要点になります。
このサイクルを担当者の勘に頼らず回すには、在庫と受発注が連動し、発注残や受注引当を踏まえた実態の在庫が1か所に揃っていることが前提です。販売HUBのような一体型クラウドなら、発注点・安全在庫を商品ごとに保持し、適正在庫を継続的に管理できます。
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